2006年9月4日
滋賀医科大学社会医学講座福祉保健医学部門 喜多 義邦
滋賀県高島市の概要
滋賀県高島市は、平成17年1月1日に旧高島郡のマキノ町、今津町、新旭町、安曇川町、高島町、朽木村が合併して誕生しました。高島市は琵琶湖と比良山系にはさまれた風光明媚な地域です。現在、5万5千人の方々が暮らしていますが、高齢化の波はこの地域も例外ではありません。私たちが行っている循環器疾患の発症登録研究で、近年、この地域では心筋梗塞の発症者が増えていることが認められました。特に、高齢者の方々の発症が増えています。
私たちと高島市との歴史
私たちは、1989年からこの地域で脳卒中や心筋梗塞が年間どのくらい発症するかといった調査を高島市内外の病院の協力をいただいて行っています。また、2002年から循環器疾患の発症や死亡の原因を見つけ出すための調査(J-MICC研究とよく似ている)を開始しています。今回、高島市の協力を得てJ-MICC研究を行うことになりました。
少し複雑ですが、私たちは、循環器疾患の発症・死亡の原因を明らかにする研究(全国32箇所との共同研究:統合研究、通称JALS研究)と併せて、がんの発症・死亡の原因を見つけ出すJ-MICC研究とを行っています。私たちは、3大生活習慣病を対象とするこの研究を高島コホート研究と呼んでいます。今年度は、その最初の調査として高島市の西方山間部にある朽木地区(旧朽木村)で調査を行いました。
朽木地区での調査
調査は、朽木保健センターの皆さんの協力を頂き、高島市が行う老人保健法に基づく基本健診(通称:成人病健診)に併せて行いました。調査に先立ち、受診を予定されている住民の方々にこの研究の目的や方法、そしてデータの使われ方や保護の仕方について理解していただくために健診会場となっている13箇所の集落の集会場全てで事前説明会を開きました。お集まりいただいた住民の方々に十分な説明ができたか不安でしたが、健診に来られた469名の方々に協力をお願いし、最終的に329名(70.1%)の方々からご協力について承諾をいただくことができました。なお、高島研究では、ご協力をいただく方に年齢による制限は定めていません。
高島研究で行っている調査の特徴
高島研究では、基本健診の検査項目に加えて、食生活と運動習慣に関するアンケート(統一調査項目)調査、尿中Na・K・クレアチニン、高感度CRP、BNP、インスリン、ABI/BaPwvなどを測定しています。これらの情報をベースとして、研究協力者の方々の発病および死亡の状況(脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、その他閉塞性動脈硬化性疾患そしてがん)を医療機関の協力を得て調査します。
愛知県がんセンター中央病院でのJ-MICC研究の参加者募集は、原則として毎日(月~金曜日)実施しており、今後4年間にわたって継続する予定です。
ご協力いただいた方々へのお礼
健診終了後、前述した全ての健診会場で朽木保健センターの方々と共に巡回し、基本健診と研究で追加した検査結果の説明と地区の特徴に合わせた健康教育を行いました。この地区巡回結果説明会には健診受診者の8割以上の方々の参加があり、私たちも驚くほどの盛り上がりを経験することができました。
現在、今回の健診結果を元にHbA1c高値もしくは肥満度の高い方々を対象に食事調査やライフコーダを用いた糖尿病教室を朽木保健センターとともに行っており、健康教育を通じて住民の方々との絆を深めて行きたいと考えています。
今後の予定
この調査は、3年をかけて高島市全体を一巡する予定です。次年度に行う地域については現在高島市と協議を開始しました。また、多くの方々にご協力をいただくため、今後、高島市と協力して講演会や説明会などを開催する予定です。