閉経女性の女性ホルモン濃度に影響する遺伝子型

研究ファイルNo.31:エストロゲン代謝関連遺伝子多型は閉経女性性ホルモン濃度に影響する

 日本では乳がんや子宮体がんなど女性ホルモンの影響をうけやすい病気が近年増えています。私たちは卵巣や皮下脂肪で女性ホルモンの合成に関わる酵素に注目しました。これらの酵素の設計図となるCYP19A1遺伝子、HSD17B1遺伝子、HSD17B2遺伝子の遺伝子多型と、閉経女性の血中ホルモン濃度との関係を調べました(図1)。

図1:女性ホルモンの合成とCYP19A1、HSD17B1、HSD17B2との関係

図1:女性ホルモンの合成とCYP19A1、HSD17B1、HSD17B2との関係

 そこで、J-MICC研究にご協力頂いた785名の自然閉経女性のCYP19A1遺伝子の4個の遺伝子多型、HSD17B1遺伝子の1多型、HSD17B2遺伝子の3多型と、閉経女性の血中ホルモン濃度(エストロン、エストラジオール)を測定しました。

 その結果、CYP19A1遺伝子のrs4441215多型のC型とrs936306多型のT型、HSD17B2遺伝子のrs4888202多型のC型とrs2955160多型のG型を持つ人では、エストロン濃度がより高くなる傾向があることがわかりました。また、CYP19A1遺伝子のrs4441215多型のC型とrs936306多型のT型を持つ人では、エストラジオール濃度がより高くなる傾向がありましたが、HSD17B2遺伝子の遺伝子多型はエストラジオール濃度に影響しませんでした(図2)。

図2:CYP19A1遺伝子・HSD17B2遺伝子の遺伝子型と女性ホルモン濃度との関係

図2:CYP19A1遺伝子・HSD17B2遺伝子の遺伝子型と女性ホルモン濃度との関係

 遺伝子多型ごとの女性ホルモンの差はごくわずかですが、長期間にわたって女性ホルモン高値が続くと、乳がんなどのリスクが高まる可能性があります。女性ホルモンは女性の健康や生活の質にも大きく影響しています。今後もJ-MICC研究のデータを使って、研究を発展させていきます。

出典:

  • Hosono S, Ito H, Oze I, Higaki Y, Morita E, Takashima N, Suzuki S, Shimatani K, Mikami H, Ohnaka K, Ozaki E, Katsuura-Kamano S, Kubo M, Nagata C, Naito M, Hamajima N, Tanaka H.
    Polymorphisms in CYP19A1, HSD17B1 and HSD17B2 genes and serum sex hormone level among postmenopausal Japanese women. Maturitas 2015; 82: 394-401.
カテゴリー: J-MICC研究概要, 遺伝子多型 パーマリンク