研究ファイルNo.29:日常的な食習慣は肝機能に影響を与える
肝障害により肝細胞が壊れると、肝酵素が血中に放出され、高値を示します。特に、肝酵素の一つであるγ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GTP)は、飲酒による肝障害などがあると数値が上昇するといわれています。最近では、γ-GTPと他の生活習慣との関連も明らかになっており、喫煙や食事などによって上昇することが分かっています。
先行研究により、肉類や油脂類などの食品の高摂取はγ-GTP上昇と関係があることが報告されています。一方、果物や野菜などの食品の高摂取はγ-GTP上昇を抑制することが報告されています。私たちの普段の食事は、食品を複数組みあわせて摂取していることから、日常的な食習慣を総合的に考慮した「食事パターン」を用いた研究が増えています。
今回、J-MICC研究佐賀地区のベースライン調査に参加された男性3,723名、女性6,080名を対象に、食事パターンと血中γ-GTPとの関連について調べました。日本人の特徴的な食事として、男女それぞれ5つの食事パターン(健康型、欧米型、魚介類型、パン食型、デザート型)を導きだしました。男女ともに「健康型」の食事でγ-GTP高値を抑制する傾向がみられ、一方、「魚介類型」でγ-GTP高値になりやすい傾向がみられました。男性のみ「パン食型」、「デザート型」でγ-GTP高値を抑制する傾向がみられましたが、女性ではこの傾向はみられませんでした。「欧米型」の食事では、男女ともに関連がみられませんでした。
このことから、日常的な食習慣が血中γ-GTPに影響を与えている可能性が考えられました。今後の更なる研究により、この研究成果は、γ-GTP上昇の予防に役立てられることが期待されます。
出典:
- Nanri H, Hara M, Nishida Y, Shimanoe C, Nakamura K, Higaki Y, Imaizumi T, Taguchi N, Sakamoto T, Horita M, Shinchi K, Kokaze A, Tanaka K.
Dietary patterns and serum gamma-glutamyl transferase in Japanese men and women. J Epidemiol 2015;25:378-86.