コーヒー摂取量と血中アディポネクチンの関連:横断解析

研究ファイルNo.105:コーヒーを飲むと「やせホルモン」が増えるのか?

 コーヒーは世界中で飲用されている飲料の一つで、死亡リスクや様々な病気のリスクを低減させる可能性があると報告されています。これまでの我々の研究でも、コーヒーを多く飲む人(特にフィルターコーヒーやインスタントコーヒー)は、循環器疾患やがんのリスクであるメタボリック症候群やその構成因子(高血圧、高血糖、高中性脂肪、低HDLコレステロール)を有する割合が低いことが分かっています(研究ファイルNo.89 )。今回我々は、このような関連がみられたメカニズムとして「アディポネクチン」が関与しているのではないかと考えました。

 アディポネクチンは、巷では「善玉ホルモン」や「やせホルモン」と呼ばれることもあり、血液中のアディポネクチン濃度が高いと、①体内の脂肪を燃焼させる、②動脈硬化になりにくくなる、③インスリン(血糖値を下げるホルモン)の効果が高くなるなどのメリットがあることが分かっています。しかし、このアディポネクチンの血中濃度は、肥満のある方では低いことも分かっています。

 このような背景から我々は、肥満の有無に分けてコーヒー摂取量と血中アディポネクチン濃度の関連を検討することとしました。

 今回の研究では、J-MICC研究徳島地区調査に参加した606名の方を対象としました。Body Mass Index(BMI)が25kg/m2以上ある場合を肥満とした場合、606名のうち462名は肥満のない方、142名は肥満のある方でした。年齢や性別などの血中アディポネクチン濃度と関連する因子の影響を考慮した結果、肥満のない方ではコーヒーの摂取量が増えるにつれて(1.5杯未満/日<1.5~3杯/日<3杯以上/日)血中アディポネクチン濃度が統計学的に有意に高くなっていました(傾向性P値=0.006)。一方で、肥満のある方ではコーヒーの摂取量が増えても、統計学的に有意な血中アディポネクチン濃度の増加はみられませんでした(傾向性P値=0.125)。(図1)

 また、コーヒーの種類(①フィルターコーヒーやインスタントコーヒー、②缶やボトル、パック入りコーヒー)を分けて検討した結果、①フィルターコーヒーやインスタントコーヒーのみで同様の結果(肥満のない方の傾向性P値=0.013、肥満のある方の傾向性P値=0.104)がみられました。(図2)

 以上の結果から、コーヒーを多く飲む(特にフィルターコーヒーやインスタントコーヒー)肥満のない方においてメタボリック症候群やその構成因子を有する割合が低い理由として、血中アディポネクチン濃度が関連している可能性が示唆されました。一方で、本研究は一時点でのコーヒー摂取量と血中アディポネクチン濃度の関連を評価した横断研究であり、結果の解釈は慎重に行う必要があります。そのため、今後はコーヒーの摂取量の違いにより血中アディポネクチン濃度がどのように経時的変化をするか調査するなどの更なる研究が必要になると考えます。

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