研究ファイルNo.110:食事の多様性とメタボの関係を探る
日本ではメタボリックシンドロームの有病率が高く、将来的な心血管疾患や糖尿病の予防が大きな課題となっている。その対策として食生活の改善は重要であるが、これまでの指導は「脂肪を控える」「糖分を減らす」といった特定の食品や栄養素の制限に偏りがちであった。一方、さまざまな食品を偏りなく摂取する「食事の多様性」が健康に与える影響については、日本人を対象とした十分な検証が行われてこなかった。
そこで本研究では、日本多施設共同コーホート研究(J-MICC study)のベースライン時のデータを用い、日本人成人における食事の多様性とメタボリックシンドロームとの関連を横断的に分析した。食事調査から食品群の摂取状況を点数化し、食事の多様性が低い群から高い群までに分類した上で、メタボリックシンドロームおよびその構成因子との関係を詳しく検討した。
日本多施設共同コーホート研究(J-MICC)の14地域のうち、必要データが不足していた3地域を除外し、35~69歳の地域住民等75,332人を対象とした。食事評価には47項目の簡易食品摂取頻度質問票を用い、「穀物・野菜、肉、乳製品、果物」の5食品群に基づく食事多様性スコア(DDS)および累積的食事多様性スコア(DDS-2)を算出した。メタボリックシンドロームは、NCEP-ATP III基準に基づき、腹囲の代替としてBMIを用いて定義した。年齢や性別、喫煙・飲酒習慣、運動の有無など、健康に影響しやすい要因を考慮したうえで統計解析を行った。さらに、肥満や高血圧、中性脂肪の高さ、善玉コレステロールの低さ、血糖値の高さといった、メタボリックシンドロームを構成するそれぞれの要素についても個別に分析した。データの一部に欠けがある場合は、信頼性を保つための統計手法で補完した。さらに、男女別や年齢層別の分析も行い、結果の一貫性を確認した。
解析の結果、食事の多様性が高い人ほど、メタボリックシンドロームを有する割合が低いことが明らかとなった(図1)。
さらに、メタボリックシンドロームの各構成要素との関連を詳細に検討した結果、多様な食品を日常的に摂取している人ほど、BMI、血圧、中性脂肪、血糖値といった指標も良好な傾向を示し、特に、「高いBMI」、「高血圧」、「脂質異常」の各リスクが有意に低下することが確認されました(図2)。
これらの関連は、年齢や性別、喫煙、飲酒、身体活動などの生活習慣要因を考慮した後も認められ、食事の多様性そのものがメタボリックシンドロームのリスク低下に関与している可能性が示された(図3)。
特定の食品を多く摂ることよりも、主食・主菜・副菜を含め、さまざまな食品群をバランスよく摂取しているかどうかが重要であることが示唆される結果であった。
本研究から、日本人におけるメタボリックシンドローム予防には、特定の食品を制限する食事よりも、食事全体の多様性を高めることが有効である可能性が示された。今後の健康づくりや栄養指導においては、「何を減らすか」ではなく、「どれだけ多様な食品を取り入れているか」という視点が、より重要になると考えられる。
今後は、食事の多様性とメタボリックシンドローム発症の因果関係の検証に加え、その背景にある社会経済的要因の解明が求められる。
出典
- Htay ZW, Michihata N, Nakamura Y, Hippo Y, Otonari J, Ikezaki H, Nishida Y, Shimanoe C, Tamura T, Nagayoshi M, Kato Y, Tamada Y, Hishida A, Tanoue S, Nishimoto D, Koyama T, Ozaki E, Kuriki K, Takashima N, Miyagawa N, Katsuura-Kamano S, Watanabe T, Wakai K, Matsuo K. Dietary diversity and the risk of metabolic syndrome in a Japanese population: an analysis of baseline cross-sectional data from the J-MICC study. Eur J Clin Nutr. 2025;79:1106–13.



