研究ファイルNo.24:日本人におけるhOGG1 Ser326Cys遺伝子多型と肥満の関連は、居住地域の影響を受ける
肥満は糖尿病発症の危険因子ですが、その機序の一つとして肥満による脂肪の蓄積が酸化ストレスを引き起こし、酸化ストレスの増大によるDNA損傷がインスリン抵抗性や糖尿病の発生に関与している可能性が考えられています。
ヒト8―オキソグアニンDNAグリコシラーゼ (hOGG1) はDNA修復酵素の1つで、hOGG1遺伝子の多型のCys型を持つ人は、Ser/Ser型の人に比べてDNA損傷の修復能が低いことが知られています。また、Cys型を持つ人はSer/Ser型の人に比べて糖尿病発生が高いことが報告されていますが、その機序については明らかではありません。近年、動物実験においてOGG1の遺伝子多型と肥満の有意な関連が報告されたことから、hOGG1遺伝子の多型が肥満を介して糖尿病の発生と関連している可能性が考えられますが、人での検討は十分ではありませんでした。
そこで、今回、J-MICC研究に参加された1,793人において、hOGG1の遺伝子の多型と肥満の関連について検討を行いました。
その結果、hOGG1遺伝子がSer/Cys型、Cys/Cys型の人は、Ser/Ser型の人に比べ肥満(BMI>27.5 kg/m2)になりやすさがそれぞれ、1.5倍、1.7倍に上昇しました(図1)。しかし、調査地域(奄美地域、または、その他の地域)の影響を調整すると関連は弱まり、ともに1.5倍となりました。これは、奄美地域にhOGG1遺伝子のCys/Cys型を保有する人の割合が高く、かつ、肥満の人の割合も多かったため、hOGG1遺伝子のCys/Cys型と肥満との関連が見かけ上強く表れていたものと考えられました。
このことから、遺伝子多型と疾病の関連を検討する際には、日本人に限った本研究においても調査地域による影響を受ける点について十分注意を払う必要性があることが示されました。今回、居住地区の影響を考慮しても、hOGG1遺伝子の多型がCys型の人は、Ser/Ser型の人に比べて太りやすい可能性が考えられました。今後、更なる研究により、今回の結果が将来の効果的な肥満予防に役立てられることが期待されます。
出典:
- Hara M, Nakamura K, Nanri H, Nishida Y, Hishida A, Kawai S, Hamajima N, Kita K, Suzuki S, Mantjoro E M, Ohnaka K, Uemura H, Matsui D, Oze I, Mikami H, Kubo M and Tanaka H on behalf of the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort (J-MICC) Study Group. Associations between hOGG1 Ser326Cys polymorphism and increased body mass index and fasting glucose in the Japanese general population. J Epidemiol. 2014;24:379-384.