研究ファイルNo.45:自覚ストレスとC-reactive proteinとの関連は、社会的支援やストレス対処行動の変化によって異なる
心理ストレスが体内の炎症を悪化させ、その結果として循環器疾患やうつ病などにかかりやすくなる可能性が示唆されてきましたが、今までの研究結果は一致していませんでした。また、同じストレスを感じても,ストレスをどう受け止め、対応したのか(ストレス対処行動)、あるいは周囲の人たちからの励ましや支援を受けられるか(社会的支援)で炎症状態が変化する可能性もありますが、まだ十分な検証が行われていません。私たちはこれまでの研究で、自覚ストレスが高い男性では炎症マーカーであるC-reactive protein(CRP)が低いことを報告しました。今回は、ジェイミック スタディ佐賀地区のベースライン調査と5年後調査に参加された8,454人について、1時点の関連ではなく5年間の変化について自覚ストレスとCRPとの関連を検討し、その関連がストレス防御因子である対処行動や社会的支援の変化により異なるのかについても検討しました。
その結果、4段階で評価した自覚ストレスのレベル(全く感じなかった→おおいに感じた)が5年後に1つ上がっていると、男性のCRPは5%低くなっており、1時点で報告されていた結果と同様にストレスの高さはCRPの低下と関連していました。一方、対処行動の「肯定的解釈」(困った問題に直面した時良い方向へ解釈しようとする)が5年間変わらなかった人ではストレスレベルが上がるとCRPが11%減少していましたが、対処行動が減っている人ではCRPは1%増加していました(図1)。同様に、社会的支援が変わらなかった人ではストレスが高くなるとCRPが13%減少していたのに対し、社会的支援が減っている人ではCRPが2%増加していました(図2)。
以上より、自覚ストレスが高くなるとCRPは低くなっていましたが、ストレス対処行動や社会的支援などのストレス防御因子の縮小により、ストレスとCRPとの関連は異なっている可能性が示唆されました。今後の更なる研究により、精神ストレスによる疾患予防に役立てることが期待されます。
出典:
- Shimanoe C, Hara M, Nishida Y, Nanri H, Otsuka Y, Horita M, Yasukata J, Miyoshi N, Yamada Y, Higaki Y, Tanaka K. Coping strategy and social support modify the association between perceived stress and C-reactive protein: a longitudinal study of healthy men and women. Stress, 2018; 21(3):237-246.