研究ファイルNo.48:長寿遺伝子SIRT1の違いにより、食事制限がBMIや体重変化に与える影響が変化する
SIRT1は長寿に関連する遺伝子として広く知られ、これまで代謝との関与について数多く研究されてきました。今回の研究では、SIRT1と食事制限や運動の組み合わせがBody Mass Index (BMI)や体重変化に与える影響について調べました。
全国のJ-MICC Studyに参加していただいた、35歳から69歳の男女4023名を対象としました。男女合わせての検討では、食事制限と運動に関して有意な結果は得られませんでしたが、女性のみの検討では、食事制限をしない場合、SIRT1の遺伝子多型(=遺伝子で個人差のある箇所)の違いにより、BMIや体重変化(20歳を基準とする)が有意に異なっていました。詳細としましては、SIRT1の遺伝子多型であるrs1467568(AA, AG, GGの3タイプ)のうち、Gアレルを持っている女性は、持っていない女性と比較して、食事制限をしない場合にBMIや20歳からの体重変化が大きいという結果になりました。一方で、食事制限をした場合には、SIRT1の遺伝子多型が異なっていてもBMIや体重変化に違いはありませんでした。
以上の結果、今回の研究では、「rs1467568のGアレルを持っている女性は、食事制限をしない場合、Gアレルを持っていない女性と比較して、BMIや体重変化が増加しやすい傾向にあるが、食事制限をした場合には、rs1467568のGアレルを持っていることによる影響はなくなる。」ということが示唆されました。このような研究が蓄積されることにより、遺伝子の違いに合わせて推奨される方法でのBMIや体重の管理が可能になることが期待されます。
出典:
- Higashibata T, Wakai K, Naito M, Morita E, Hishida A, Hamajima N, Hara M, Suzuki S, Hosono S, Takashima N, Ohnaka K, Takada A, Mikami H, Watanabe Y, Uemura H, Kubo M, Tanaka H. Effects of self-reported calorie restriction on correlations between SIRT1 polymorphisms and body mass index and long-term weight change. Gene. 2016; 594: 16-22.