中高強度の身体活動と座位行動は独立して腎機能と関連:横断研究

研究ファイルNo.72:不活動な生活の改善で慢性腎臓病を予防できる可能性

 近年、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)という腎臓の機能低下が慢性的に続く病気が増えてきています。CKDは放置すると末期腎不全となり人工透析や腎移植が必要となる他、心臓病や脳卒中などの疾患にもかかりやすいことが明らかになっています。CKDの危険因子は加齢や肥満、高血圧ですが、予防因子についての知見は十分でありませんでした。

 そこで、J-MICC研究14地区のベースライン調査に2004-2013年に参加された、35歳から69歳の66,603人の方々ついて、座って過ごす時間(座位時間)とCKDの関連を調べました。さらに、座位時間を中高強度の身体活動に置き換えた場合の予防効果についても推計しました。

 その結果、座位時間が長くなるほどCKDと診断される可能性が高いことが明らかになりました。特に、歩行以上の強度の活動(中高強度の身体活動)の量が少ない人ほどその傾向が強く、例えば、1日の座位時間が7時間未満の人に比べて16時間以上の人では、CKDと診断される割合が約2倍高いことが示されました(図)。

 一方、1時間の座位時間を、1時間の立位や歩行などに置き換えると、CKDのリスクは3~4%低下することもわかりました。

 今回の研究より、座位時間が長くなるほどCKDになるリスクが高いが、立っている時間や歩く時間を増やすなど、座位時間を短くするような生活の改善でCKDを予防できる可能性が示唆されました。

出典:

  • Hara M, Nishida Y, Tanaka K, Shimanoe C, Koga K, Furukawa T, Higaki Y, Shinchi K, Ikezaki H, Murata M, Takeuchi K, Tamura T, Hishida A, Tsukamoto M, Kadomatsu Y, Matsuo K, Oze I, Mikami H, Kusakabe M, Takezaki T, Ibusuki R, Suzuki S, Nakagawa-Senda H, Matsui D, Koyama T, Kuriki K, Takashima N, Nakamura Y, Arisawa K, Katsuura-Kamano S, Wakai K. Moderate-to-vigorous physical activity and sedentary behavior are independently associated with renal function: a cross-sectional study. J Epidemiol. 2021 Oct 16. doi: 10.2188/jea.JE20210155. Online ahead of print.
カテゴリー: 腎臓病, 運動習慣 パーマリンク