腎機能が悪くなりやすい遺伝子の型

研究ファイル No.9: 慢性腎臓病の割合は、炎症性サイトカインの遺伝子多型によって異なる

私たちの体は厳格に制御された強力な免疫機構に守られています。しかし、その制御が乱れて強く働きすぎると自分自身の体を痛めることがあります。
免疫の活動のひとつを炎症反応と呼びますが、炎症反応を引き起こすサイトカインという細胞同士の情報伝達物質の過剰が持続すると、大事な内臓の血管を痛め、心筋梗塞や腎不全になりやすくなると考えられています。

J-MICC研究に参加された3323人の方の腎臓の機能と炎症性サイトカインの遺伝子多型の関連について調べました。
炎症反応を引き起こす作用のあるサイトカインのひとつであるインターロイキン6(IL-6)を少なく産生する遺伝子多型(IL6の遺伝子の–572の位置の遺伝子がGG型)の人や、炎症反応を抑える作用のあるインターロイキン4(IL-4)を多く産生する遺伝子多型(IL4の遺伝子の–33の位置の遺伝子がCC型)の人では、腎臓の機能が悪い「慢性腎臓病」の割合が「少ない」ことが分かりました。また両方の遺伝子多型を持つ人では、より慢性腎臓病が少ないことも分かりました。

近い将来、腎機能が悪くなりやすい遺伝子多型を持つ人は、血圧や血糖や肥満を十分コントロールして、腎臓病にならないように予防していくことが出来るようになるかもしれませんね。

慢性腎臓病の割合

出典

  • Okada R, Wakai K, Naito M, Morita E, Kawai S, Hamajima N, Hara M, Takashima N, Suzuki S, Takezaki T, Ohnaka K, Arisawa K, Hirohata H, Matsuo K, Mikami H, Kubo M, Tanaka H.  Pro/anti-inflammatory cytokine gene polymorphisms and chronic kidney disease: a cross-sectional study. BMC Nephrol. 2012;13:2.
カテゴリー: 腎臓病, 遺伝子多型 パーマリンク