肥満の糖尿病発症に及ぼす影響の強さは、ある遺伝的体質によって異なる

研究ファイルNo.17:糖尿病発症リスクにおける肥満度とレジスチン遺伝子多型の交互作用

日本では、座業中心の生活スタイルや食生活の欧米化などにより、糖尿病にかかる人が昔に比べて増えています。糖尿病に伴う糖の代謝異常により、虚血性心疾患や脳梗塞が起こりやすくなります。

レジスチンは脂肪細胞と脂肪組織内にある免疫細胞により作られるホルモンで、肥満により起こる糖尿病の発生に関係していると考えられており、近年、このレジスチンの遺伝子配列の個人間の多様性(RETN -420 C>G遺伝子多型)が、2型糖尿病の発症リスクに関係していることが報告されています。しかし、これら遺伝子多型と肥満や栄養摂取などの生活要因との複合的作用(=交互作用)が、糖尿病の発症リスクに与える影響は十分には検証されていませんでした。

そこで、今回、J-MICC研究に参加された2,651名においてRETN -420 C>G遺伝子多型と肥満・栄養摂取を含めた生活要因が2型糖尿病の発症リスクに与える影響について検討を行いました。

その解析の結果、RETN -420 C>G遺伝子多型がG/G型の人は、C/C又はC/G型の人に比べ糖尿病リスクが約半分に下がることが分かりました。また、(肥満度の指標である)BMIが25未満の人はBMI25以上の人に比べ糖尿病リスクは約0.4倍と低いのですが、RETN -420 C>G遺伝子多型がG/G型でBMIが25未満であった場合、C/C又はC/G型の人のBMIが25未満であった場合に比べて、さらに約8分の1に糖尿病のリスクが下がる事が明らかになりました。

このことから(逆に)考えると、RETN -420 C>G遺伝子多型がC/C又はC/G型の人は、G/G型の人に比べて糖尿病リスクが高く、また糖尿病にならないようにするために、よりダイエットに気を付けなければならない可能性があります。ただ、今回の結果はこれまでのRETN -420 C>G遺伝子多型と糖尿病リスクに関する報告とは方向性が必ずしも一致はしておらず、今後の更なる研究報告が待たれるところです。

糖尿病発症における肥満度とレジスチン遺伝子多型の交互作用

出典

  • Hishida A, Wakai K, Okada R, Morita E, Hamajima N, Hosono S, Higaki Y, Turin TC, Suzuki S, Motahareh K, Mikami H, Tashiro N, Watanabe I, Katsuura S, Kubo M, Tanaka H, Naito M. Significant interaction between RETN -420 G/G genotype and lower BMI on decreased risk of type 2 diabetes mellitus (T2DM) in Japanese–the J-MICC Study. Endocr J. 2013;60:237-43.
カテゴリー: メタボリックシンドローム, 糖尿病, 遺伝子多型 パーマリンク