研究ファイルNo.51:非喫煙者における受動喫煙への曝露と高血圧症との関連
受動喫煙によって血圧は一時的に上昇することが知られています。しかし、受動喫煙と長期の高血圧症との関連については明らかではありません。そこで今回、日本多施設共同コーホート研究に参加された方々の調査データに基づいて、受動喫煙と高血圧症との関連を評価しました。
本研究では、非喫煙者32,098名(男性7,216名、女性24,882名)が解析対象者です。受動喫煙への曝露状況は、参加者の皆様に記入いただいた調査票の回答に基づいて評価しました。また参加者の安静時の座位血圧について、調査スタッフが自動血圧計または水銀血圧計を用いて測定しました。高血圧症は、最高血圧140mmHg以上または最低血圧90mmHg以上、あるいは血圧を下げる薬の服用のいずれかを満たす場合としました。受動喫煙と高血圧症との関連を評価するにあたり、統計学的手法を用いて関連に影響を与える他の要因(年齢や飲酒、BMIなど)を考慮しました。
その結果、受動喫煙に「ほぼ毎日」さらされた人の高血圧症は、受動喫煙が「時々あるいはほとんどない人」と比べて11%増加しました(図1の「全体」)。また受動喫煙にさらされた時間ごとの結果では、受動喫煙を受けた時間が1日あたり1時間増加することによる高血圧症の増加は3%でした(図2)。
本研究は一時点での研究であるため、受動喫煙と高血圧症の因果関係については示すことができません。しかし、本研究から高血圧症予防においてたばこ煙にさらされることを避ける重要性が示唆されました。受動喫煙によって長期的に血圧が上昇するメカニズムとして、たばこ煙中の有害物質(一酸化炭素など)による動脈硬化や血管へのダメージを通じた血圧上昇が考えられています。また受動喫煙は肺がんをはじめとする様々な生活習慣病の危険因子とされています。自らの健康を守るため、受動喫煙を避けることが望ましいと考えられます。
出典:
- Tamura T, Kadomatsu Y, Tsukamoto M, Okada R, Sasakabe T, Kawai S, Hishida A, Hara M, Tanaka K, Shimoshikiryo I, Takezaki T, Watanabe I, Matsui D, Nishiyama T, Suzuki S, Endoh K, Kuriki K, Kita Y, Katsuura-Kamano S, Arisawa K, Ikezaki H, Furusyo N, Koyanagi YN, Oze I, Nakamura Y, Mikami H, Naito M, Wakai K; for the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort (J-MICC) Study. Association of exposure level to passive smoking with hypertension among lifetime nonsmokers in Japan: a cross-sectional study. Medicine (Baltimore) 2018; 97: e13241.