研究ファイルNo.81:コーヒーの消費量と骨格筋量
コーヒーは世界中で飲まれている飲料であり、病気の発症や死亡リスク低下と関連していることが報告されています。一方、サルコペニア(加齢に伴う骨格筋量と機能の低下)に対するコーヒーの効果はよくわかっていません。過去の動物実験では、コーヒーが発揮する抗炎症効果によってサルコペニアを予防する可能性が示唆されています。しかし、人に対しての効果は十分に検討されていませんでした。今回の研究では、コーヒーの消費量と骨格筋の関係を調べ、その背景に抗炎症作用が関与しているとの仮説を立てて調査を行いました。
我々は、J-MICC研究佐賀地区の二次調査に参加された45~75歳の6369人を対象に、習慣的なコーヒーの消費量、骨格筋量および握力との関係について横断的に調査しました。コーヒーは1日あたりの消費量として換算され、全く飲まない・1 杯未満・1~2杯・3杯以上の4グループに分類しました。骨格筋量は生体電気インピーダンス法で測定しました。また、年齢、体脂肪量、喫煙、飲酒、緑茶の消費量、総エネルギー摂取量、タンパク質摂取量、服薬状況、高感度CRP(炎症レベルの指標)も解析に含めました。
解析の結果、男女ともにコーヒーの消費量が多い人は骨格筋量も多い関係があることがわかりました(図1)。また、この関連に炎症のレベルは大きく影響していませんでした。一方、握力とコーヒーの消費量には有意な関連を認めませんでした(図2)。
今回の研究によって、習慣的なコーヒーの消費量と骨格筋量に正の関係があることが明らかになりました。この結果は、コーヒーを飲む習慣が骨格筋量の減少を防いでくれる可能性を示唆しています。一方で、コーヒーと骨格筋量の因果関係を説明するメカニズムに関しては未だ不明なままです。今後の研究によって詳細なメカニズムの解明が期待されます。
出典:
- Iwasaka C, Yamada Y, Nishida Y, Hara M, Yasukata J, Miyoshi N, Shimanoe C, Nanri H, Furukawa T, Koga K, Horita M, Higaki Y, Tanaka K. Association between habitual coffee consumption and skeletal muscle mass in middle-aged and older Japanese people. Geriatr. Gerontol. Int. 2021; 950– 958.