HbA1c値への糖尿病危険因子の影響は、遺伝多型で変わる

研究ファイルNo.15: HbA1c値に対する糖尿病の危険因子の影響の強さは、PPARG2遺伝多型によって、異なる。

概要

HbA1c値は、1~2か月前の血糖の状態を反映し、糖尿病の診断や血糖管理に使用されるほか、その値が正常範囲内でも高い人では将来の糖尿病の発症リスクが高いことが知られています。糖尿病の危険因子として、加齢、肥満、エネルギー過多、不活動、喫煙などの生活習慣のほか、糖尿病の家族歴が確立していますが、近年、肥満や脂質代謝に関連する遺伝子のPPARG2がPro/Pro型の人に比べて、Pro/AlaまたはAla/Ala型の人で糖尿病のリスクが低いことが分かってきました。しかし、日本人一般集団において糖尿病の危険因子とPPARG2の遺伝子型がHbA1cに与える影響は十分に検証されていませんでした。

そこで、今回、J-MICC研究に参加された2,637人の方のPPARG2の遺伝子の型と糖尿病の危険因子がHbA1c値に及ぼす影響について検討を行いました。


その結果、PPARG2がPro/Pro型の人のHbA1cの値は、加齢や肥満、家族歴があると高くなりましたが、Pro/AlaまたはAla/Ala型の人ではその影響を受けにくいことが分かりました。特に女性ではBMIの上昇に伴うHbA1cの上昇がみられませんでした。しかし、日本人は、これらの遺伝子型を持つ人は非常に少なく、本研究でも6%でした。したがって、大多数の日本人は、糖尿病の予防のために、既知の危険因子である肥満、エネルギー過多、不活動、喫煙などを改善する必要があるといえるでしょう。

HbA1cの平均値における肥満とPPARG2遺伝子多型との交互作用(女性)

出典

  • Hara M, Higaki Y, Taguchi N, Shinchi K, Morita E, Naito M, Hamajima N, Takashima N, Suzuki S, Nakamura A, Ohnaka K, Uemura H, Nishida H, Hosono S, Mikami H, Kubo M and Tanaka H on behalf of the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort (J-MICC) Study Group. Effect of the PPARG2 Pro12Ala polymorphism and clinical risk factors for diabetes mellitus on HbA1c in the Japanese general population. J Epidemiol. 2012;22:523-531.
カテゴリー: 糖尿病, 遺伝子多型 パーマリンク