肝障害に影響する遺伝子型

研究ファイルNo.34:肝障害の程度は炎症性サイトカインIL6の遺伝子多型によって異なる

私たちの体は厳格に制御された強力な免疫機構に守られています。しかし、その制御が乱れて強く働きすぎると自分自身の体を痛めることがあります。免疫の活動のひとつを炎症反応と呼びますが、炎症反応を引き起こすサイトカインという細胞同士の情報伝達物質の過剰が持続すると、大事な内臓を痛め、肝臓では肝細胞の障害が起こると考えられています。

J-MICC研究に参加された3257名の方の肝障害と炎症性サイトカインの遺伝子多型の関連について調べました。炎症反応を引き起こす作用のあるサイトカインのひとつであるインターロイキン6(IL-6)を多く産生することが知られている遺伝子多型(IL6の遺伝子の-634の位置の遺伝子がGG型)を持つ人では、肝障害の程度を表すaspartate aminotransferase(AST)の値が大きいことが分かりました(図1)。また喫煙者や飲酒者のほうが、遺伝子多型が肝障害に及ぼす影響が大きいことが分かりました。

肝障害を起こしやすい遺伝子型を持っている人では、お酒やタバコにいっそう気をつけなければいけませんね。

図1

出典:

  • Sugimoto Y, Wakai K, Nakagawa H, Suma S, Sasakabe T, Sakamoto T, Takashima N, Suzuki S, Ogawa S, Ohnaka K, Kuriyama N, Arisawa K, Mikami H, Kubo M, Hosono S, Hamajima N, Tanaka H; J-MICC Study Group.
    Associations between polymorphisms of interleukin-6 and related cytokine genes and serum liver damage markers: a cross-sectional study in the Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort (J-MICC) Study.
    Gene. 2015;557:158-162.
カテゴリー: J-MICC研究概要, お酒, 肝臓病, 遺伝子多型 パーマリンク