研究ファイルNo.62:日本人の座位時間と全死亡の関係
研究の概要
座っている時間(座位時間)が長いことで、血行不良と代謝の低下を引き起こすことにより、死亡リスク増加や循環器疾患発症と関わることがいくつかの国から報告されています。一方、他国と比較して、日本国内での座位時間に着目した研究は限られていました。そこで今回は、6万人を超える日本人を平均7.7年間追跡したデータを用い、日中の座位時間と全死亡(全ての死因を含む)の関係を、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の有無と、余暇時間の運動量に分け、検討しました。解析の結果、下記が明らかとなりました。
- 日本人の大規模研究として、初めて仕事中の時間および余暇時間を含む全ての日中の座位時間が長いほど死亡と関係することが明らかとなりました。
- 高血圧、脂質異常症、糖尿病の有無に関わらず、日中の座位時間の長さに伴い死亡リスクが高くなります。また、高血圧、脂質異常症、糖尿病の保有数が増えるほど、死亡リスクが高くなることが認められました。
- 余暇の身体活動量を増やしても、日中の座位時間の長さと死亡の関連を、完全に抑制するには至らないことが明らかとなりました。
参加者全体では、日中の座位時間が2時間増えるごとに、死亡リスクは15%増加することが認められました。生活習慣病の有病者ごとに検討すると、脂質異常症では18%、高血圧では20%、糖尿病では27%の死亡リスク増加が認められました。余暇時間の身体活動(METs:身体活動の強度基準)量に応じて、4群に分けて解析してみると、余暇時間の身体活動が増えても、座位時間による死亡リスクの減少効果はわずかでした。
研究方法
日本多施設共同コーホート研究(J-MICC study)の調査に参加した、64,456名(男性29,022名、女性35,434名)を解析対象者と、平均7.7年間追跡調査したデータを用いました。睡眠時間を除く日中の行動時間は、国際標準化身体活動質問票をベースとした質問票を用い、日中の座位時間の長さと、全死亡(全ての死因を含む)の関係を、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の有無に分け、検討しました。日中の座位時間は、質問票をもとに以下の4群に分けて解析を行いました。
(1)5時間未満 (2)5時間から7時間未満 (3)7時間9時間未満 (4)9時間以上
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