肥満の糖尿病発症に及ぼす影響の強さは、ある遺伝的体質によって異なる

研究ファイルNo.17:糖尿病発症リスクにおける肥満度とレジスチン遺伝子多型の交互作用

日本では、座業中心の生活スタイルや食生活の欧米化などにより、糖尿病にかかる人が昔に比べて増えています。糖尿病に伴う糖の代謝異常により、虚血性心疾患や脳梗塞が起こりやすくなります。

レジスチンは脂肪細胞と脂肪組織内にある免疫細胞により作られるホルモンで、肥満により起こる糖尿病の発生に関係していると考えられており、近年、このレジスチンの遺伝子配列の個人間の多様性(RETN -420 C>G遺伝子多型)が、2型糖尿病の発症リスクに関係していることが報告されています。しかし、これら遺伝子多型と肥満や栄養摂取などの生活要因との複合的作用(=交互作用)が、糖尿病の発症リスクに与える影響は十分には検証されていませんでした。

そこで、今回、 続きを読む

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腎機能が悪くなりやすい遺伝子の型~その2

研究ファイルNo.16:細胞外基質分解酵素の遺伝子多型の組み合わせで変わる慢性腎臓病の割合

私たちの細胞を作っているコラーゲンなど細胞外基質を分解する蛋白を、マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalopretoinase、MMP)と言います。例えばオタマジャクシの尻尾が吸収されるのに関係していますが、人間ではこの酵素が多すぎると関節リウマチなどが、少なすぎると動脈硬化が進み心筋梗塞や脳梗塞などが増えることが分かっています。細胞外基質の合成と分解のバランスがいろいろな病気の予防に役立っています。

そこでJ-MICC研究に参加された3323人の方のマトリックスメタロプロテイナーゼの遺伝子多型と腎臓の機能との関連を調べました。 続きを読む

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HbA1c値への糖尿病危険因子の影響は、遺伝多型で変わる

研究ファイルNo.15: HbA1c値に対する糖尿病の危険因子の影響の強さは、PPARG2遺伝多型によって、異なる。

概要

HbA1c値は、1~2か月前の血糖の状態を反映し、糖尿病の診断や血糖管理に使用されるほか、その値が正常範囲内でも高い人では将来の糖尿病の発症リスクが高いことが知られています。糖尿病の危険因子として、加齢、肥満、エネルギー過多、不活動、喫煙などの生活習慣のほか、糖尿病の家族歴が確立していますが、近年、肥満や脂質代謝に関連する遺伝子のPPARG2がPro/Pro型の人に比べて、Pro/AlaまたはAla/Ala型の人で糖尿病のリスクが低いことが分かってきました。しかし、日本人一般集団において糖尿病の危険因子とPPARG2の遺伝子型がHbA1cに与える影響は十分に検証されていませんでした。

そこで、今回、J-MICC研究に参加された2,637人の方のPPARG2の遺伝子の型と糖尿病の危険因子がHbA1c値に及ぼす影響について検討を行いました。

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あまみ島嶼地域における動脈硬化

研究ファイルNo.14: あまみ島嶼地域住民は日本健常集団より動脈硬化の値が低い

鹿児島県のあまみ島嶼地域は長寿者の割合が多い地域です。一方、がんや心臓病、糖尿病などの生活習慣病は本土地域ほど多くはないものの、生活習慣の変化に伴い増加しつつあります。動脈硬化は心臓病や脳卒中、糖尿病に深く関わっています。

最近開発されたCardio-ankle vascular index (CAVI)通称「キャビ」は、動脈硬化の程度を数字で示すことができる測定方法の1つです。

J-MICC研究に参加されたあまみ島嶼地域の一般住民4,523名と、鹿児島県本土の一般住民440名の動脈硬化の値をキャビを用いて調べました。さらに、動脈硬化の危険要因を持っている人を除外した日本全国の健常集団5,969名の動脈硬化の値とも比較しました。

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脂質代謝異常症がおこりやすい遺伝子多型

研究ファイルNo.13: 脂質代謝異常症発症リスクにおける脂肪摂取と脂質代謝遺伝子多型の交互作用

現代日本においても、座位中心の不活発なライフスタイルや食生活の欧米化に起因すると考えられる虚血性心疾患、脳血管疾患はまだまだ国民の死亡原因の主因(がんに次いで第2位・第3位)を占めており、これまでの様々な研究によりコレステロール等の脂質代謝や糖質代謝の異常(脂質代謝異常症、糖質代謝異常症)がこれらの疾患のリスクを高めることが分かっています。
また、これまでに、これらの脂質・糖質代謝に関わる遺伝子(APOA5(脂質代謝), GCK, GCKR(糖質代謝))の個人間におけるバリエーション(=遺伝子多型)が、脂質代謝異常症、糖質代謝異常症の発症リスクに関係していることが 続きを読む

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現代日本人はどうやって生じたか

研究ファイルNo.12: 日本人形成の2重構造モデルは正しいようだ

現代日本人は,数万年前から日本列島に来たいわゆる「縄文系」の人々と,縄文時代末期から弥生時代にかけて日本列島に来た「弥生系」の人々の混血により生じたとする2重構造モデルは故・埴原和郎先生により提唱された仮説ですが,現在では基本的には正しいものとされています.この説では,弥生系の人々が日本列島の中心部に多く入ってきたことから,日本列島の中心部では弥生系の人々の特徴が強くあらわれ,列島の両北端では縄文系の人々の特徴が色濃く残るとされています.

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閉経年齢に関わる遺伝子多型

研究ファイル No.11: インスリン抵抗性に関わるPPAR関連遺伝子多型が自然閉経年齢に与える影響

女性が自然に閉経する年齢は、42~58歳ぐらいまでと幅広く(平均は50~51歳ぐらいですが)、個人差がかなり大きいイベントと言えます。早すぎる閉経は、女性ホルモンの欠乏が人生の早い時期から生じるために、その後の心筋梗塞や骨粗鬆症の危険を高めることがわかっています。したがって、閉経年齢に影響を及ぼす要因を明らかにすることは、閉経後の健康維持のために有意義な情報となります。

最近、メタボリック症候群の本質ともいえるインスリン抵抗性があると自然の閉経年齢が早くなることを示唆する報告がなされています。そこで 続きを読む

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肝機能に関わる遺伝子多型

研究ファイル No.10: COMTの熱不安定性に関わる遺伝子多型rs4680が肝機能に与える影響

タンパク質を網羅的に解析するプロテオミクスの手法を用いて、動物モデルによる肝傷害についての研究を進めたところ、肝臓内のカテコール-O-メチル基転移酵素 (COMT) に変化が見られたことから、COMTと肝機能の関連に着目しました。
COMTは女性らしさに関わるエストロゲンの代謝や、アミノ酸の一種であるチロシンの代謝で働きます。その中のカテコールエストロゲンやカテコールアミンに作用する酵素であり、様々な生理機能の調節に関与します。 続きを読む

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腎機能が悪くなりやすい遺伝子の型

研究ファイル No.9: 慢性腎臓病の割合は、炎症性サイトカインの遺伝子多型によって異なる

私たちの体は厳格に制御された強力な免疫機構に守られています。しかし、その制御が乱れて強く働きすぎると自分自身の体を痛めることがあります。
免疫の活動のひとつを炎症反応と呼びますが、炎症反応を引き起こすサイトカインという細胞同士の情報伝達物質の過剰が持続すると、大事な内臓の血管を痛め、心筋梗塞や腎不全になりやすくなると考えられています。

J-MICC研究に参加された3323人の方の腎臓の機能と炎症性サイトカインの遺伝子多型の関連について調べました。 続きを読む

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お酒への強さに関係する遺伝子にも地域差

研究ファイル No.8: 生活習慣や健診データに関係する遺伝子型の地域差

 J-MICC研究では、遺伝的要因と生活習慣や健診データなどとの関係を調べるため、全国10地区で研究に参加されている方の中から4519人について、108種類の遺伝子型(タイプ)を調べました。その結果、遺伝子型の中には、地域によって頻度にかなりの差があるものもあることがわかりました。 続きを読む

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